偉い人が、呼吸するように嘘をつく。正義はどこへ行ったのか...なんて悩みを抱えているのは、現代に生きる我々だけではありません。最近、ジョージ・オーウェルの名作「1984年」が見直されているようです。アマゾンでも堂々の一位。
とは言え、もっとサクッと内容を理解したいなぁということで、普段はあまり買わない「まんがでわかる」シリーズをポチリ。これが、思った以上に良かったのでご紹介。
とにかく恐ろしい
「1984年」は、1949年に発表された小説。基本的にはスターリンが独裁体制維持のためにやっていたことがベースになっているらしい。ジョージ・オーウェルが結核に苦しみながら、1950年に亡くなる前に書きあげたものとのこと。
ここに書かれていることが「小説だよね」で済んでいれば良いのですが、「今って部分的に、こうなっているところあるんじゃない?」と思わせるところが怖いです。その、背筋がゾッとするところを、山形浩生さんの解説で「ああそうか」と理解できるのがありがたい。小説を読んでいるだけだったら、もしかしたら「小説だよね」で済ませていたかもしれなかったところを、深堀できます。
戯画や風刺は、ふつうは現実を誇張して見せるので、現実より派手だ。でも、すでに現実が「1984年」という風刺を凌駕している。インターネットとスマートフォン、SNSのつくり出す監視社会のあり方は、すでに「1984年」に描かれたものを超えている。(p.43)
怖すぎです。
doublethink と newspeak
作品にでてくる怖い概念が、二重思考と新語法。嫌すぎる、けど気を付けたいです。
- 二重思考 矛盾をそのまま受け入れて両方とも正しいと信じること
- 新語法 国民の語彙や思考の範囲を制限し、管理することを目的として考案された新しい言葉の用法
これと一緒に出てくる怖いスローガンが下記3つ。
- War is peace 戦争の継続こそが恒久平和である→階級社会の安定化
- Freedom is slavery 自由に生きようとすると必ず抑圧されるので、隷従したほうが自由を謳歌できる
- Ignorance is strength 真実を知ろうとすると矯正されるので、無知なままでいるほうが幸せである
やっぱり怖すぎる...小説の中で閉じているとは思えないので...
我々の生きる道
「さいごに」で、山形さんが説いていることは、とても大事なことだなと思いました。
ジョージ・オーウェルが述べているという、言論の自由の定義を(これも山形さんの解説から)引用して、記事を終わります。
言論の自由とは、自分が好きなことを言えるということではなく、他人が自分の気にくわないことを言っても我慢することなのだ(p.149)