某所にて、エアコンの電気代をものすごく雑に計算しているのを見て、「それ違うだろ!」と思ったのでメモしておきます。
- エアコンの電気代を定格消費電力で計算するのは雑
- 実際のデータ
- 比較をするなら「期間消費電力量」を見る
- 使用する環境も重要
- まとめ
- おまけ:2.2kWエアコンAPF番付表
- (おまけその2)パナソニックさんの説明サイト
エアコンの電気代を定格消費電力で計算するのは雑
例えば、私が好きなダイキンさんの標準的な機種のデータをこちらから持ってくると...
こんな絵があります。
ここで、赤線を引いたのは定格消費電力(定格能力を発揮するときの消費電力)で、これを使って計算しても、目安にはなるかもしれませんが、精度が出ません。メーカーの狙いとも外れます。
たとえば、このエアコンを1日5時間、1か月に20日利用した場合だと、1か月に発生する冷房電気代は下記の通り計算できます。
1時間あたりの電気代=0.57kWh×27円/kWh=15.39円/h
1か月あたりの電気代=15.39円/h×5h/日×20日/月=1,539円/月
→ 雑すぎ
今どきの、割と断熱のしっかりした家であれば、定格消費電力でずーっと動き続けることはありません。実際に運転して測ってみると、上の絵で黄色マーカーを付けたところが効いてきます。
実際のデータ
上に引っ張ってきたダイキンさんのベーシックモデルは、実は私が寝室につけたものでして、稼働中の電力データはこんな感じになっています。スマートメーターだとこういうグラフがすぐ見えて便利。
深夜の寝ている時間帯が冷蔵庫やらインターネットルーターやら各種待機電力による、基礎的な消費電力です。毎時、大体 0.2kWhくらいでしょうか。 で、朝から寝るまでずっとエアコンをつけていたのが黄色マーカーを付けた時間帯。基礎消費に対して0.1から0.2kWh上乗せになっている計算です。外気温がそれほど高くないので、運転も軽々といったところ。定格は570Wですが、大体 150Wくらいで運転している模様。
一方、我が家の居間にはもう少し大きなエアコン(定格4kW)がついています。これを稼働するとこんな感じになります(寝室のは停止)。
この日は湿度が80%近くになったので、除湿運転を黄色マーカーを付けた時間で実施しました。軽々運転のはずですが、400W~500Wくらい食っているようです。こちらの機種のカタログスペックで定格消費電力値を見ると1200Wですから、確かに低負荷運転ではあるものの、能力の大きいエアコンは低負荷でも小型モデルの3倍くらいの電気を食うことがわかります。これはちょっと残念。つけっぱなしで運用するなら、もっと出力を絞れる機種を選べば良かった。
いずれにせよ、これらの実稼働電力と、カタログの定格消費電力の差が大きいことがわかると思います。また、上にあげた能力の大きいエアコンについては、定常運転で消費電力を絞れないので、使わないときは消したほうが良さそう。
比較をするなら「期間消費電力量」を見る
エアコンを選ぶときには、スマホとつながるとか、AI機能搭載だとか、いろんな機能に目を奪われがちです。それも商品力なのですが、基礎体力は省エネ性に出るんじゃないかと思っています。
メーカーの業界は、期間消費電力量という指標を作っています。
その算出基準は、以下の通り。
- 外気温度:東京をモデルとしています。
- 設定温度:冷房時27℃/暖房時20℃
- 期間:冷房期間(5月23日~10月4日)
暖房期間(11月8日~4月16日)- 時間:6:00~24:00の18時間
- 住宅:JIS C9612による平均的な木造住宅(南向)
- 部屋の広さ:機種に見合った部屋の広さ
- 要するに、平均的な木造住宅で、機種の設計能力に応じた部屋を、夏は設定27度で134日間x18時間、冬は設定20度で159日間x18時間運転した時の消費電力が、あらかじめ計算されているというわけ。この間の外気温変化は、東京の平年に合わせてあります。
- 最初にあげたダイキンさんの小型機であれば、717kWhとなっています(夏:225kWh、冬:492kWh)。税込み27円/kWhで計算すると、年間の電気代は19,359円(夏:6,075円、冬:13,284円)。単純に稼働日数の293日で割ると、日当たり 2.44kWh/66円となりますが、それだとちょっと乱暴ですので、夏と冬に分けると、それぞれ日当たり 1.68kWh/45円と、3.09kWh/84円になります。
- もう少し高級な機種だと、603kWh(達成率118%)というのもあります。期間消費電力量が100kWh違えば、税込電気代が年に2700円変わってくるわけで、10年で27000円の差になります。この差が大きいか小さいかは、本体価格の差を考慮して判断するのでしょう。
なお、ここで使われている「平均的な木造住宅」というのは1965年スペックの平屋だそうなので、今どきのマンションとか、計画換気がされているような断熱性能の高い戸建てだと、全体的に消費電力が下がってくると期待できます。この辺は、実際にコンセントで測ってみないとわかりませんが...単純に考えると、全体が3/4 になれば、差も 3/4 になるわけで、先ほどの 100kWhの違いも 75kWhになる理屈ですが、実際どうなるか。
ちなみに、APFとエアコン能力と期間消費電力量の間には下記の関係があるとのこと(引用元は上と同じ)。
これで、アイリスオーヤマのようにAPFだけ載せていて期間消費電力量がカタログに載っていない場合でも、計算することができます。例えば今年のモデルならば
- IKF-221Gの場合→4161/5.8 = 717kWh
- IKF-281Gの場合→5296/5.8 = 913kWh
となります。あれ、ダイキンの安いのと同じですねこれ。
(期間消費電力量についてのまとめ)
- おそらく、通常の家庭より大きめに算出されている(5月23日から10月4日まで、毎日18時間もエアコンつける人がどれだけいますかね、という話)
- 雪もあまり降らず、真冬でもあまり氷点下にならない東京が基本なので、寒い地方だとズレが大きそう(夏の東京は沖縄より暑いことが多いので、冷房の方はあまりズレないかな)
- 普及機と高級機で差が出るが、定格能力による差の方が大きい
使用する環境も重要
よく、エアコンはつけたり消したりするより、つけっぱなしが良いのだと言います。が、それも環境次第であることが先の例でもわかります。電力を絞れない大型エアコンは特に注意です。また、西日で温められるような部屋を冷やし続けるのは電気の無駄とのこと。それはそうですよね。
こちらにはいろいろ節電Tipsが載っていて参考になりました。
まとめ
というわけで、エアコンの電気代を計算するのに定格消費電力を使っても、当てにならないですよ!どうしてもやりたいなら、期間消費電力量を使いましょう。
さらに、下記のようなメーターを使って実際の消費電力を測ると面白いです。ただし、エアコンの接続はしないようにと書かれている製品が多いので火災などには注意が必要(自己責任ですね)。内部で焦げることもあるようです。くれぐれもご注意を。(そもそも 1500W 以下しか対応していないので、冷房能力2.5kW以下のモデルが対象になりますね)
スマートプラグでも測れるようです。これも面白そう...→我慢できずに購入して調べました。良かったらこちらをどうぞ。
おまけ:2.2kWエアコンAPF番付表
ちょっとエアコン比較(冷房2.2kW)をしてみます。日立は流石です。一方、価格勝負の銘柄は、だいたいAPF 5.8/期間消費電力量 717kWhで横並びになっています。コンプレッサ部分は共通なのでしょうか??
記事にも書きましたが、本体価格の差が大きいと、10年かけても元が取れないかもしれませんので、なかなか判断が難しいですね(価格は2020/7調べ)。
メーカー・ブランド | 機種 | APF(2013) | 期間 消費電力量 |
価格コム 店頭参考価格 |
日立 白くまくん | RAS-X22J | 7.6 | 548kWh | 108,380円 |
シャープ | AY-J22X | 7.2 | 578kWh | 196,860円 |
パナソニック エオリア | CS-228CX | 7.1 | 586kWh | 99,800円 |
三菱電機 霧ヶ峰 | MSZ-ZXV2220 | 7.0 | 594kWh | 115,000円 |
三菱電機 霧ヶ峰 | MSZ-JXV2219 | 6.7 | 621kWh | 101,000円 |
ダイキン うるさらX | S22XTRXS | 6.6 | 630kWh | 125,000円 |
富士通ゼネラル ノクリア | AS-V22J | 6.6 | 630kWh | 59,989円 |
東芝 大清快 | RAS-F221DX | 6.3 | 660kWh | 74,800円 |
ダイキン FXシリーズ | S22VTFXS | 6.2 | 671kWh | 67,000円 |
アイリスオーヤマ | IRR-2219C | 5.8 | 717kWh | 39,000円 |
日立 白くまくん | RAS-A22J | 5.8 | 717kWh | 40,000円 |
パナソニック エオリア | CS-229CF | 5.8 | 717kWh | 41,380円 |
ダイキン Eシリーズ | S22WTES | 5.8 | 717kWh | 44,500円 |
実はもっと網羅的な表がありました(経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ型製品情報サイト」より)。こちらは夏冬の消費電力量がわかるので、冷房が得意なのか暖房が得意なのか、というところもわかります。ただし、製品の発売時期によって期間消費電力量がJIS-C9612:2005だったりJIS-C9612:2013だったりするので注意。
この表は便利なので、もっと知られてもいいかも知れません(値段は書いてないですけどね)。
(おまけその2)パナソニックさんの説明サイト
これまでいろいろ書きましたが、なんのことはない、パナソニックさんのサイトによくまとまった情報がありました。
リモコンやスマホアプリで電気代がわかる機種もあるんですねぇ。世の中進んでます。(私はベーシックモデルばかり使ってますが...)